- 対面で決めた家族の合言葉は、AI音声クローンによる緊急電話へのいちばんシンプルな備えになります。
- ネットで見つからない秘密のフレーズを選びましょう。ペットの名前、好きなチーム、地名、誕生日は避けます。
- 合言葉は対面か肉声で伝え、文字では送らないこと。祖父母全員に伝えておきます。
- 電話が急を要すると感じたら、いったん切り、すでに保存してある番号からかけ直しましょう。
誰かが話している数秒の音声があれば、詐欺グループは今や聞き慣れた声をそっくりに再現できてしまいます。そのうえで親や祖父母に電話をかけ、切迫した筋書きを語りかけるのです。「事故を起こした」「警察に捕まった」「今すぐお金を振り込んでほしい」——。声が本人そのものに聞こえるから、不安もまた本物になってしまう。合言葉は、その不安にブレーキをかける仕組みです。本人なら答えられて、見知らぬ他人には絶対に答えられない、ごく簡単なテストになります。
これは「念のため」という話ではありません。米連邦取引委員会(FTC)の消費者向け注意喚起「詐欺師はAIを使って家族の緊急事態を装う手口を強化している」(2023年3月)は、犯罪者が音声クローンを使って親族になりすます実態を警告しています。さらに米FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)が2024年12月3日に出した生成AI詐欺に関する公共広報では、家族であらかじめ秘密の言葉やフレーズを決めておくことを具体的に勧めています。合言葉は、この両方がそろって指し示している対策なのです。
家族の合言葉が効く理由
合言葉がうまくいくのは、判断の軸を「声が本人っぽいか」から「わが家の言葉を知っているか」に変えてくれるからです。今の時代、声をまねることは簡単になりました。けれど、直接会ったときにだけ共有した私的なフレーズは、そう簡単には偽れません。電話の相手は、その言葉を知っているか、知らないか。どちらかしかないのです。相手がどれだけ切羽詰まった話をしても、もう関係なくなります。
家族が話している公開動画は、声をコピーする側にとって格好の素材になります。誕生日のメッセージ、卒業式のスピーチ、楽しそうな一コマ――どれもそうです。だからこそ、公開する前に家族の思い出を誰に見せるかを決めることが、もうひとつの大切な理由になります。合言葉は、何かを隠すよう求めるものではありません。ただ、インターネットからは拾い集められない確認をひとつ加えてくれるだけなのです。
ネットで見つからない「合言葉」を選ぶ
選ぶなら、身内だけが知っていて、すぐに思い出せて、しかも公の場には一切出ていない言葉。少しでも検索で出てきそうなものは避けてください。
- ペットの名前、お子さんのあだ名、住んでいる通りの名前、応援しているチーム、誕生日は使わないこと。こうした情報は、SNSの投稿やプロフィールにすでに載っていることが多いものです。
- 家業の名前、みんなが写真に撮りたがる愛犬、旅行先として写真を共有した場所も避けましょう。
- 逆に、ほんの少し変わっていて具体的なものを選ぶのがおすすめです。造語、どこにも書き留めたことのない家族内の冗談、関係のない名詞を二つつなげた言葉など。
- とっさの場面でも口にできるくらい短くして、いつ言うときも同じ言い方で揃えておくこと。
目指すのは、本物の家族ならすぐに答えられて、知らない人にはどこをたどっても推測も検索もできない——そんな言葉です。
合言葉は、文字ではなく口頭で決める
合言葉を共有するときは、直接会って伝えるか、すでに信頼している番号にこちらからかけ直して肉声で伝えてください。メッセージやメール、チャットは絶対に使わないこと。これらは第三者に盗み見られたりスクリーンショットを撮られたりする恐れがありますし、やりとりの履歴に合言葉がそのまま残り続けてしまいます。
声に出して一緒に確認すると記憶にも定着しやすく、「どう使うか」をその場で決めるきっかけにもなります。たとえば、電話をかけてきた相手が自分から合言葉を言う、あるいはこちらから尋ねる、という形です。もし相手が口ごもったり話をそらしたりしたら、それがそのまま答えになります。
祖父母にこそ伝えておきたい——狙われやすいのは年配の世代だから
「家族が困っている」とかたるこの手口は、年配の親族に向けられることがとても多いものです。つまり、こうした電話を受け取る可能性がいちばん高いのは、合言葉をいちばん知っておくべき人たち、ということ。おじいちゃん・おばあちゃんには、脅かさず、落ち着いて、ひとつずつ説明してあげてください。
- 手口を一文で伝える:「声をまねた偽の電話で、急いでお金を送ってほしいと言ってくる詐欺があるよ」
- その場で、顔を合わせているうちに合言葉を共有する
- 覚えやすいルールをひとつ決めておく:「合言葉がなければ、お金は出さない。例外なし」
- 本物の家族なら、本当に困っていても合言葉を喜んで答えてくれる、と伝えておく
「合言葉を忘れてしまいそう」と心配する祖父母がいても、それで大丈夫です。このあと紹介する「いったん切って、自分からかけ直す」というひと手間が、合言葉がなくてもその人を守ってくれます。
一度だけ練習して、あとはシンプルに
頭の中だけで終わらせず、一度だけ実際に試してみてください。親戚に電話をかけて、会話のなかに合言葉を自然にまぜ、相手にそれを言い返してもらう。たった一回でも口に出しておくと、合言葉は「忘れてしまう言葉」から「いざというとき使える言葉」に変わります。
この「かけ直し」を最後の砦として家族に伝えておきましょう。緊張のあまり合言葉がとっさに出てこなくても、「いったん切って、自分の知っている番号にかけ直す」だけで、同じ手口の詐欺はそれ単体で防げます。
本当の声を、自分たちの手で残す
合言葉は家族という「人」を守るためのもの。そして、声そのものを残すことは、それとは別の、もっと温かい作業です。おじいちゃん・おばあちゃんが昔話を語る声は、公開された動画の切れ端のなかにばらばらに散らばったままにするのではなく、意図をもって手元に残しておく価値があります。音声のことをすでに考え始めているなら、留守番電話の声を残す方法のガイドもあわせて読んでみてください。
Kaiaryは、それをプライベートに実現するひとつの方法です。写真も、言葉も、音声の記録も、ひとつの家族の記録として一緒に暮らせる場所。家族で共有する機能を使えば、それぞれの思い出を「誰が見て、誰が聞けるか」を自分で選べます。大切な声を、開かれたフィードの上だけでなく、自分が管理できる空間のなかに置いておく——それは、録音が家族のために存在し、情報を勝手に集める相手のためには存在しない、ということです。こうした公開範囲の仕組みがどう動くのかは、Kaiaryのプライバシーへの約束で読めます。
できることの限界もはっきりさせておきます。合言葉とプライベートな保存は、出回る素材と危険そのものを減らしてくれます。けれど、私たちを含めてどんなツールも、声がどこか別の場所からコピーされることを絶対に防ぐとは約束できません。もしそれが起きてしまったとき、最後に家族を守るのが、あの合言葉なのです。
どんな言葉が家族の合言葉に向いていますか?
公の場に出てこない、短くて秘密のフレーズです。造語や、関係のない名詞を二つ組み合わせたものがよく機能します。ペットの名前、あだ名、地名、チーム名、誕生日は、ネットで見つかってしまうため避けましょう。
詐欺師はどうやって家族の声を複製するのですか?
米連邦取引委員会(FTC)が2023年3月に出した消費者向け注意喚起によると、犯人は短い音声から AI で声を真似、親族に偽の緊急電話をかけることができます。誰かが話している公開動画が、その材料になり得ます。
緊急の電話が本物に思えたらどうすればいいですか?
いったん電話を切り、相手が伝えてきた番号ではなく、すでに保存してある番号から本人にかけ直してください。そのうえで合言葉を尋ねます。本物の緊急事態は短いかけ直しに耐えますが、詐欺はたいてい耐えられません。




